瞬きと共振

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なぜ古典Zineをつくるのか

Zineを読んでくれた友人・知人から「昔から古典やってたんですか」「古典って訳せるんですね」「翻案って結局何なの」「なんで作ったんですか」など、さまざまコメントいただいたのでその辺について少し書きます。 昔から古典やってたんですか 大学時代に古…

【試し読み】駆け抜けてゆく(原案『世間娘気質』)

Zine『瞬きと共振』より、「駆け抜けてゆく」(原案『世間娘気質』)の一部を試し読み公開いたします。 駆け抜けてゆく 駆け出す前のようにふくらはぎがうずうずする。つま先で宙を蹴ると空気がしなった。早く「あの人」を追いかけないといけない。 花 野は…

Zine『瞬きと共振』の企画・制作振り返り

Zine『瞬きと共振』とは 立野由利子と松本千里が合作で制作したZineです。江戸時代に書かれた浮世草子7編を文章とグラフィックで再解釈しています。 企画と制作について グラフィックデザイナーの松本さんとなにか一緒に作りたいと思っていた私は、福岡で毎…

「念佛寺の和尚これは迷惑」現代語訳

曽祖父は信州桔梗が原で甲首を取り、それから相続いて武家の家筋は劣らない。代々嘘をつかず、盗みもしない。出頭方(主君の近侍)におべっかを言わず、冬も頭巾を被らず足袋も履かない。しかめっ面をしてキッとした勤め顔をする侍は、大方時の運に恵まれな…

「詠めつづけし老木の花の頃」現代語訳

「御痔の薬あり、万によし」と板きれに書きつけた看板の店がある。一間間口に障子と簾をかけているし、看板もいかにも老人が書いた字なので客はめったに来ないし生活の足しにもならない。 この物寂しい家は、谷中の門前筋にある。軒先の松はねじけ、ノウゼン…

「名残の人形は物いわぬ鴛鴦の池」現代語訳

柳も桜も葉が落ちてしまって、年寄りの姿を見ているようだ。冬の山は活気がなく、物寂しい。東山から斜めに、北山の在郷道を行くと、松のこずえに吹く風ばかり聞こえる。春になればこの辺りも人が集まる山になるのだが、寒い冬は京の遊び好きも外に出ようと…

「酔ざめの酒うらみ」現代語訳

昔、唐の人がつくったものに「十分盃」というものがある。空の時は傾いているが、酒を注ぐと徐々にまっすぐになり、いっぱいに注いでしまうと全てこぼれる仕掛けがほどこされた、八分目までしか注げない盃だ。人の心を見つもる道具として、使われることが多…

「鯉の散らし紋」現代語訳

川魚は淀の名物だ、と世間では言うけれども、河内の国の内助が淵という池は雑魚まですぐれているように見える。 この池は昔から今に至るまで水が枯れたことがない。内助という漁師は池の堤に一軒家を建てて、小さい船から竿をさして漁をしていた。妻子も持た…

「身の悪を我口から白人となる浮気娘」現代語訳

身分が低い家の娘も容姿が評価され、姉が嫁いでいた家の後家になり、年寄りの男を夫に持つこともある。商売の都合のために下働きの男を跡継ぎに引き上げて、娘と結婚させる家もある。持参金を目当てに田舎から農業をしていて日に黒く焼けている養子をもらう…

「夢に京より戻る」現代語訳

桜鯛・桜貝、春の終わりに地引網を引く堺の浜に、朝早く通う魚売りたちが、魚を入れる目籠を背負って大道筋の柳町(大阪・堺にある町)を歩いていると、美しい女性がたどたどしい足取りで歩いてくる。しおれた藤の枝をかざし、従者も連れずにただ一人で歩い…